- 『有給休暇義務化』ってなに?パートやアルバイトも対象なの?
- そもそもパートやアルバイトでも有給はあるの?
- 会社が勝手に有給の日を指定してきたけど、これって違法なの?
- 結局、『有給休暇義務化』のメリットとデメリットはなに?
特にパートやアルバイトだと自分の有給日数が把握できない場合もあったり、労働者が損をしてしまうこともあるので有給制度の内容を理解しておいた方が良いです。
疑問点については東京労働局に電話で直接問い合わせて詳しく教えてもらいましたのであわせてご紹介します。
では、さっそくいってみましょう!
※ボリュームのある記事ですが、ぜひ最後まで読んでいただきあなたが損をしない働き方を知ってもらえたら幸いです。
この記事はこんな人におすすめです!
🔶有給休暇について詳しく知りたい
🔶パートやアルバイトの有給休暇・有給休暇義務化について知りたい
目次
『働き方改革』の概要をチェックしよう
『働き方改革』の主な内容は3つ!噛み砕いた言い方をすると・・・
①【2019年4月スタート】残業は月45時間以内、年間でも360時間以内!
②【2019年4月スタート】有給休暇は1年に5日間必ず取得すること(対象・条件あり)
③【2020年4月スタート】正社員(正規雇用労働者)とパート・派遣社員等(非正規雇用労働者)の仕事内容が同じなら待遇(給与や賞与)も同じにしよう!
※中小企業には猶予期間があり、スタート時期が異なります。(①2020年4月、③2021年4月にスタート)
この3つのうち、②が『有給休暇義務化』です。
2019年4月からスタートする『有給休暇義務化』は全ての事業所が対象になります!(①③のように中小企業に猶予期間がありません。)
【有給の基礎知識】有給はいつ・誰が・どのくらいの日数もらえるの?
有給休暇義務化の話をする前に、まず有給休暇について理解しましょう!意外と知られていない制度もありますよ。
有給を付与されるのは誰?パートでも付与されます!
有給休暇の付与(取得)の対象は、労働者全てです。
労働者とは、正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など雇用者として働いている人を指します。
例えば、ラーメン屋を経営している個人事業主のもとでアルバイトやパートをしている場合でも、有給休暇は付与されるべきものということです。
ただ、パートやアルバイトでも有給が付与される事実は、知らない人もけっこういますよね。
<質問>
会社が労働者に対して、有給休暇について告知する義務はありますか?
正社員とパート・アルバイトで告知義務についての違いはありますか?
<回答>
そもそも有給休暇が発生する時点で会社が労働者に対して『あなたに◯日の有給休暇が付与されました』というような告知義務は法律上ありません。正社員とパート・アルバイトでの違いはありません。
ただ、初めに雇用される時に『労働条件通知書』という雇用契約書を結びますが、この契約書には雇用時点で決まっている労働に関する情報を全て記載しなくてはいけません。
よって、有給休暇についても『労働条件通知書』に『雇用の半年後に有給休暇が◯日発生します。その後1年ごとに・・・』という内容の文言が必要ということです。
さらに従業員が10名以上の会社では『就業規則』に有給休暇の制度内容について記載することが義務付けられています。
有給発生の日数とタイミングは?
有給の日数は、年間の勤務日数・勤務年数により異なります。
🔶原則
以下、2つの条件を満たしていれば雇い入れ(働き始めて)から半年後に有給が最低10日間付与されます。
- 雇い入れ(働き始めて)から半年間連続して勤務している
- 8割以上出勤している
1回目(半年後)の取得後は、1年ごとに付与日数が増加し勤続7年以降は一律で毎年20日間の付与となります。
※画像引用:厚生労働省
🔶パートタイム労働者は?
パートやアルバイトなどでも以下のように有給が付与されます。
※画像引用:厚生労働省
※太枠の線は後ほど『有給休暇義務化の対象』で詳しくご説明します
有給で支給される金額はいくら?何を基準にするの?
有給で支給される金額の計算方法は、会社の就業規則に記載されています。
主に、3つの計算方法があります。
<有給休暇で支給される金額の計算方法>
- 働く予定だった時間数分の賃金
- 過去3カ月分の平均的な1日の賃金
- 健康保険料の標準報酬月額
パートやアルバイトの場合は、「働く予定だった時間数分の賃金」「過去3カ月分の平均的な1日の賃金」で計算される場合が多いです。
有給は2年が時効
有給取得日から2年間で使い切らないと、時効になりリセットされます。
例えば、2018年10月1日に有給が10日間付与された場合、2年後の2020年9月30日の時点で『2018年10月1日に付与された有給』が3日残っていてもリセットされて0日になるということです。
(2019年10月1日に付与された有給は、2020年9月30日に0日にはなりません。0日になるのは2年後の2012年9月30日です)
有給は半日だけ使える場合がある
有給を半日だけ使うことができるかどうかは、会社次第です。会社が了承すれば可能です。
有給が半日でも使えるかどうかは、就業規則に書いてあることが多いです。
子育て主婦としては子供の体調や用事で半日勤務になる場合もあるので、今後は見直しされることを期待したいです。
有給を時間単位で使うには労使協定の締結が必要
有給の時間単位の使用については、前提として労使協定の締結(会社と過半数の労働者が合意すること)が必要です。
労使協定の締結があれば、1年間に5日間を限度として時間単位での有給使用も認められています。
大手企業などでは取り入れられている制度の一つです。
有給休暇義務化とは?
制度の概要
有給休暇義務化とは・・・
1年に有給を10日以上付与されている労働者(※)の中で、1年で5日以上の有給を使用していない労働者に対して、使用人(会社)が
『まだ有給を5日間使っていないようだね。1年間で有給は必ず5日間とってくださいね!!有給はいつにしますか?』
と積極的に促し労働者に有給を取得させる義務のことです。
実際には、こんな会話を労働者一人一人にするのは非効率なので、後程説明する『計画年休』などを使って労働者が有給を取得できるような取り組みが進んでいます。
有給休暇義務化を果たさない使用人(会社)に対しては、改善指導や罰則もあります。
具体的には以下の通りです。
※『有給休暇義務化』の対象:1年に有給を10日以上付与されている労働者は、以下の通り。
- 出勤日数が労働日数の8割なら、勤務開始(雇い入れ)から半年経てば10日間の有給が付与されます。
- 出勤日数が労働日数の8割未満(主にパートやアルバイト)の場合は、1年で10日間の有給が付与される人は以下の2通りです。
・週4回、3年6ヶ月以上勤務している人
・週3回、5年6ヶ月以上勤務している人
出勤日数が労働日数の8割未満(主にパートやアルバイト)の場合は複雑なので、先程の一覧表↓をもう一度見てみましょう。太枠の線で囲った部分が有給休暇義務化の対象です。
🔶パートやアルバイトの有給日数
※画像引用:厚生労働省
ちなみに、週2回の勤務の人で3年6ヶ月以上勤務すると、保有している累計の有給日数が10日以上になることもありますが有給休暇義務化の対象外です。
理由は、有給休暇義務化の対象はあくまで年1回の有給の付与日数が10日以上の人だからです。
罰則
使用人(会社)に対する罰則は2パターンあります。労働者に対する罰則はありません。
まずは労働基準監督署から改善に向けての具体的な指導が入ります。それでも違反が繰り返される場合に法的な措置になります。
🔶30万円以下の罰金
・年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
・使用者による時季指定を行う場合において、就業規則に記載していない場合
🔶6か月以下の懲役または30万円以下の罰金
・労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合
<質問>
罰則は、違反者1人に対して最大30万円でしょうか?10人の違反者がいたら最大300万円になりますか?
懲役はどのような場合に適用されますか?
<回答>
はい、1人につき最大30万円なので10人の違反者がいれば最大300万円になります。
懲役は司法の判断になります。
計画年休を導入する会社が増えている理由とは?
ここで押さえておきたいのが『計画年休』についてです。有給制度の一部です。
2019年4月スタートの有給休暇義務化に伴い、計画年休を導入する会社が増えています。計画年休は、昭和62年に制定された労働法の一つで有給取得を促進する目的で作られました。
計画年休とは、労使協定(会社と過半数の労働者の合意)を結べば、有給のうち最低5日を残して、それ以外の有給を会社が計画的に割り振ることができる制度です。
会社が計画年休を導入する目的とは?
会社が計画年休を導入する目的は3つあります。
- 労働者が有給を取りやすくなる
- 会社が有給の管理を少しでも簡単にしたい
- 会社が有給を指定する場合、労働者が確実に有給を取得できる
以降でより具体的にみていきます。
計画年休の方法は?導入する会社が増えている理由は?
計画年休には主に3つの方法があります。3つの方法をミックスすることもできます。
②部署や課ごとに順番で有給を使う
③年度始め等に個人が有給の計画表を作って会社に提出し管理していく
具体例で説明すると・・・
①会社全体:元からある年末年始の休みに有給2日間をプラスする
②部署ごと:元からあるお盆休みに有給1日間をプラスする
③個人ごと:年度始めに個人の有給管理表を作り最低でも有給2日間を予定する
ちなみに、計画年休で会社全体が休業日となる場合には、有給休暇義務化の対象外(有給休暇が年10日以下)の労働者に会社が休業補償(予定賃金の60%支給)をしなければなりません。
事例:勤続年数3年の社員
事例でみていきましょう。
勤続年数3年の社員であれば、有給が1年で14日付与されます。
もし、会社で『最低5日』以外の全ての有給に計画年休が導入されると・・・
- 5日間:自分の意志で日程を決められる有給
- 9日間:計画年休
という内訳になります。
計画年休がメリットに感じるか、デメリットに感じるかは人それぞれです。
今まで有給をしっかり取得できていた人にとっては『自由な有給が5日間しかないの?不満だ』ということになりますよね。
でも、有給をあまり使っていなかった人にとっては『そんなに有給もらえるの?会社が干渉してくれると有給を取りやすくていいね』ということに。
ちなみに計画年休は労使協定をもとに実行されるため、労使協定を覆さない限り変えることができません。
<質問>
計画年休が労使協定で決まっている場合、例外的に日程を変更する方法はありますか?
<回答>
労使協定で決まったことは変えられないため、日程の変更はできません。
労使協定内で『例外的に◯◯という状況の時には個人ごとの変更を認める』などと補足事項があれば変更できます。(会社側に立つと、補足により管理が大変になるかもしれないので慎重に検討した方が良いということもお聞きしました)
計画年休の一例をご紹介
『個人が有給の計画表を作って会社と情報共有しながら計画的に有給を使う方法』の一例をご紹介します。
実際に私が勤務していた大手メーカーでは、2019年4月の働き方改革に向けて数年前から『毎月、有給休暇を1日取得する』という目標をかかげ、
②毎月、15日前後に各部署の有給取得率の進捗状況がメールで一斉送信され、課長・部長の責任のもと月末までに全員有給取得を目指す
③翌月、月初に前月の有給取得実績がメールで一斉送信される
という方法で、有給休暇を取るように全社員が管理されていました。
実際には、営業・エンジニア部門での有給取得率は50%前後、スタッフ部門での有給取得率は100%に近い数字でした。
この取り組みについて、私が所属していた内部監査で各部署へのヒアリングを行いましたが、特に営業・エンジニア部門では残業時間や休日出勤の問題などもあり根深いため、有給休暇なんて取れるはずない・・・という意見も多くありました。
有給休暇義務化の抜け道とは?
SNS等では、有給休暇義務化の抜け道とも言えるような会社の対応がアップされていました。
有給休暇義務化に伴い、2019年度は数日間の土曜日出勤が設定されています。土曜日出勤は有給を使うように会社から指示が出ています。空調や警備システムの関係で通常業務は行わない予定。
この問題に対する答えが、厚生労働省の『年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説のQ&A(P.22)』にありました。
<質問>
今回の法改正を契機に、法定休日ではない所定休日を労働日に変更し、当該労働日について、使用者が年次有給休暇として時季指定することはできますか?<回答>
ご質問のような手法は、実質的に年次有給休暇の取得の促進につながっておらず、望ましくないも のです。※引用:厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 のQ&A(P.22)』
確かに一見法律には触れていないけど、かなりグレーゾーンですよね。
仮に労働局が会社を調査をしても、『法定休日ではない所定休日を労働日に変更した理由』について会社の業績や状況を理由にされてしまい、なかなか踏み込んだ改善指導ができないのかもしれません。
そうだとしても、今後このグレーゾーンへの労働局の対応は急務だと感じます。
総合すると、有給休暇義務化のメリットとデメリットは何?
有給休暇義務化のメリットとは?
🔶労働者のメリット
- 今まで有給休暇が取りづらかった人にとっては取りやすくなる
- 有給休暇でリフレッシュできたり家族との時間を持てる
- パートやアルバイトでも有給取得できることが知られるようになる(なってほしい!)
🔶会社のメリット
- 業務効率などを抜本的に見直す機会
- 社員満足度の上昇により、会社の業績や社会的な信用度があがる
有給休暇義務化のデメリット
🔶労働者のデメリット
- 計画年休で会社が有給を指定した場合は、自由度が下がる
- 結局業務量が変わらないと、有給の日でも自宅で仕事をしなくてはいけない(ゆっくり休めない)
🔶会社のデメリット
- 業務に支障がでる
- 労働日数が減ることにより売上や利益が減少してしまう
働き方改革でずっと言われていることですが、会社全体で業務内容を精査したり仕事のやり方を見直すなどの『抜本的な改善』がないと
「有給休暇取れよー!残業するな!」
と言われても、会社の管理をかいくぐって仕事をしたり業務に支障をきたしたり、問題解決どころか最悪ブラック化が進んでしまうケースさえありますよね。
有給をスムーズに取るための3つのコツ
私は子育てしながら派遣社員として8年間働いてきました。
派遣社員という立場だと有給を取得することはあまり難しくありませんでしたが、主に3つのことに気をつけていました。
- できるだけ早く有給の申請をすること
- 繁忙期に有給をとるのはなるべく控える
- 有給予定日の1週間ぐらい前から上司や同僚にさりげなく告知しておく
私の場合は、子供や家の用事で有給を取るときは予定が決まったらできるだけ早く有給の申請をしていました。
上司から承認されたら、予定表などに入力し部署内で情報を見えるようにしておくことが大事です。
上司も忙しいので全て覚えていられません。
直前になって『あれ?有給とるの?』なんて言われないためにも『見える化』しておきましょう!
上司に、有給の情報を刷り込む・・・
有給をスムーズに取るためにも、ぜひ取り入れてみてください。
以上です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
主婦が働くことは、パートでもフルタイムでも大変なことが多いです。だからこそ労働者の権利でもある有給をうまく使ってほしいと思います。
私は子育てしながら派遣で8年働いていますが、直接雇用の正社員やパートで働いていた時よりも有給は取りやすいですし、派遣でなければ仕事と子育ての両立は難しかったと感じています。
派遣で働き始めるときは『とりあえず、未経験だけどやってみよう』という軽い気持ちでしたが、あの時チャレンジしてよかったと。
主婦向けの大手派遣会社では子育て支援を会社の方針としてかかげ、主婦が働きやすい環境・職場を提供してくれています。
こちら↓の『主婦に優しい大手派遣会社』ランキングは子育て主婦目線で、私が実際に大手派遣会社から受けた対応・サービスの詳細などをご紹介しています。
それに伴い、いろいろな疑問が湧いてきますよね。